経営士協会九州支部

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トップページ >  経営に役立つ話の一覧  >  2.チームビルディングとその理論的な背景について(2008/1/1発行の会報第15号に掲載)

チームビルディングとその理論的な背景について


株式会社 ティー・エム・ジー 代表取締役
経営コンサルタント 平野 喜久臣
(九州支部会員)


1.はじめに
 団塊世代の退職、少子化傾向等の影響を受け、今後ますます労働人口が減少し、企業とくに中小企業にとって優秀な人材を確保することが困難となって来ています。そして、この様な社会状況下において、与えられた人的資源をいかに活用して、売上や生産性、サービス力を向上させ、どのように企業を成長させるかということが、経営者にとって大きな課題の一つではないかと思われます。そこで、どうしたら社員はもっと活気づくのか? どうしたら社員がお互いに力を合わせてくれるのか? どうしたら社員の一体感を高められるのか? と日々悩まれている中小企業の経営者の方々に、これらの問題を解決し、社員のモチベーションを上げ組織を活性化させ、生産性を向上させることができる「チームビルディング」とその理論的背景についてご紹介します。

2.組織を活性化するには個人と組織がwin─winとなる関係が重要
 組織を活性化し、生産性を向上させるためには、個人と組織との関係を円滑にし一体感を持たせることが重要となります。その一例として、「個と組織、新たな挑戦(働くニホン)」の表題で日本経済新聞企業面に掲載された記事(2007 年10月1 日掲載)を以下に紹介致します。

「効率・意欲どう両立」
 「働くニホン」がかつてない壁に直面している。日本企業は「失われた15年」に古い殻を脱ぎ捨て競争力を回復したが、職場の風景は一変。
上場企業は5年連続で最高益の見通しなのに、働く現場には息切れムードも漂う。資本主義経済の高速回転は止まらない。働く意欲と効率を両立させ、個人と組織がともに成長する。新た
な働くカタチを作る挑戦が始まった。「社員が感じる働きがい!」についての調査結果を回答の順位でみると、

1.自分の成長 2.達成感 3.職場への貢献 4.社会への貢献5.顧客からの評価 6.会社からの評価7.賃金

となっており、第1位は「自分の成長」で全体の46%、注目の賃金は31%で7番目となっています。
この回答結果は、雇用形態や賃金、残業、報酬というテーマは自己成長」や「働く意義」を深掘りする事で解決できる問題であり、それ自体は新たなテーマへの挑戦というほどの議論にはならないという事を意味しています。
 さらに記事には、「会社が伸びれば全ての社員が満たされる」という「正の方程式」が崩れ、社員或いは会社も悩むとあります。個と組織のwin─winの関係をどうすれば実現できるのか。そのためには手始めとして、職場内に「働く意義」・「仕事の面白さ」を感ずる風土を醸成していく事を経営者が積極的に考えるべき時代を迎えたと書かれています。
 この記事からも分かるように、社員のモチベーションを上げるためには個と組織がwin─winとなる関係を構築する事が不可欠である事がわかります。


3.チーム・ビルディングとは
 一般に仕事はチームを組んで進めることが多いかと思います。経営者の考えるように事業がうまくいかない場合、一般によくあることですが、その原因として「経営者指示通りに社員が働かなかったからだ」、「うまくいかないのはリーダー又はメンバーが悪いからだ」という様に、チームを構成する人達の資質のせいにしてしまう事が多いかと思います。確かにチームの要はリーダーであり、良いリーダーがいるチームはうまくいく場合が多いと思います。しかし、うまくいかないからといって、現実問題としてリーダー・メンバーを簡単に交代させる事はできないし、仮に交代させるにしても、人望が厚く優秀な素晴らしいリーダーをどこで探
せば良いのかと言う問題にぶつかるのではないでしょうか。
 このように考えますと、仕事を担当しているチームが順調に仕事を進め成果を出すためには、仕事を担当して いるチームのリーダーやメンバーの資質を問うのではなく、人の気持ちや人と人との関係・つながりを変える事でチームを活性化させることがより現実的な解決方法になるかと思われます。
 「チームビルディング」とは、良いチームをつくるための考え方や技法を集大成したものであり、言い換えると人と人を「つなぐ」戦略的人事技法と言えます。そしてチームビルディングは、1人1人の知恵や思いは小さくても、チームのメンバー1人1人が共通の目標に向かって、気持ちを分かち合い・つなぎ合わせることによ
り、個と組織がwin─winとなる関係を構築し、活発に協働しながら成長していくチームを作り出すためのポイントを教えてくれます。

 ところが我々日本人は、今までこのような人の気持ちをまとめ業務効率を改善する技術に対してあまり関心を払っていませんでした。それは、日本が単一国家・単一民族で構成されていたので、チームを構成するメンバーの幅や考え方の差が小さく、特別な事をしなくても効率の良いチームが形成されると思い込んでいたからではないかと思われます。また、チーム作りといっても皆で拳を突き上げ「頑張ろう」と叫んだり、「赤提灯で一杯」というのが関の山であったのではないでしょうか。その点「チームビルディング」は、これまでの日本人的な慣習を見直し、チームを率いるリーダーが短時間で効果的に、しかも活性化した組織を作るための戦略的人事技法として有効な手法と言えるかと思われます。

4.チームビルディングは社会関係資本を効率的に活用する技法
 これまでは、経営資本といえば一般的にヒト(人的資本)モノ(物的資本)カネ(金融資本)を指していましたが、最近はこれに知識や情報(知的資本)を加える事も多くなっています。
 従来の物作り中心の工業化社会では、モノ(土地、設備、天然資源)やカネといった目に見える資本が重要であったため、ヒトは単なる労働力としてしか考えられていませんでした。しかし、知識づくり中心の情報化社会では、ヒト(能力)、知識、関係といった目に見えない資本に比重が移っています。
 そして近年、人と人との関係(つながり)そのものを資源・資本と見なし、これを社会関係資本と呼ぶようになってきました。社会関係資本を有効に活用するためには、「信頼」「互酬性の規範」「ネットワーク」の3つがキーファクターとなります。今日のネットワーク型社会では、社会関係資本が重要な位置を占めており、いかに人と人との関係性を向上させ人の潜在的な能力を引き出すか、またいかに人と人の相互作用の中から新しい知識を生み出すかと言うことが今日の主たる課題となってきています。
 いわば社会関係資本は人的資産と知的資産の触媒役を果たし、社会関係資本の多寡で集団のパフォーマンスがまるで異なってしまうことになります。

 しかも、この社会関係資本は工夫次第ではいくらでも増やせる資本であるため、まさに社会関係資本の有効活用こそが、企業活動の決め手となっています。そして「チームビルディング」は、これら社会関係資本を効率的に活用して、個人個人の持ち味を活かしつつかつ個々人の思いを一つにして、チームの目的・目標に向かって効率よく確実に進んでいける組織を作るための手法であり、経営面・人事管理面で戦略的に重要な技法と言えます。

5.チームビルディングのメリット
 チームビルディングを導入すると、人と人との関係を最適にして適材適所を実現するので、同じ仕事をするにしてもチーム内にこれまでとはずいぶん違ったムードが醸成され、その結果、成果が眼に見える形で現れて来ます。またチームビルディング導入時の効果として、以下の3つのメリットが挙げられます。

フォーカシング
 チームの課題に対するメンバーの理解、感情、意識、意欲などがフォーカスされる。バラバラだったエネルギーのベクトルが同じ方向を向くようになり、大きな力が発揮できるようになります。

モチベーション
 メンバー1人ひとりのやる気が高まります。モチベーションというと、お金や自己実現といった個人の動機づけを考えがちですが、さらに「チームに貢献したい」という貢献意識や、「チームから認められたい」という承認欲求が加わり、そして個人的にこれらが充足されると、飛躍的にメンバーのモチベーションが高まります。

ダイナミズム
 これまで多くのチームでは、メンバーの能力が十分に共鳴できず、1+1が2以下になりチームとしての効果を発揮できないことがあったのではないかと思います。このような場合チームビルディングを行うと、メンバー同士の相乗効果が発揮され、1+1が3にも4にも拡大でき、チームの持つダイナミズムを十分に発揮できる
ようになります。

6.チームビルディングの理論的背景
 人の資質を考える上で重要な事柄は、思考タイプ(思考行動パターン)の違いではないかと思われます。論理的に考える人と直感的・感覚的に考える人とでは、当然出てくるアイデアも異なりますので、両者を企業のミッションに対して適切に組み合わせる事でチームは活性化します。
 組織行動論は、1920年代後半から1930年代前半にかけて行われたホーソン研究がスタートと言われています。人間の態度や行動、モチベーション(動機付け)、リーダーシップ、グループダイナミックス(集団動学)等は、現在も組織行動論の中で取り上げられており、研究の多くがこれらの結果をもとにして行われています。生産性を高める要因として、職場内チームの人間関係が重要である事が早くから立証されていましたが、これまでは人間関係を分析する手法として次の4つの分析方法が一般的でした。

交流分析(TA)
 交流分析(TA)とは、互いに反応し合っている人々の間で行われている交流を分析することで、心のタイプを5つに分類している。

エニアグラム
 エニアグラムとは「9の図」という意味のギリシャ語で、人の果たす役割の傾向とそのアクティビティを9つのタイプに分類している。

ハーマンモデル
 ハーマンモデルとは、「脳」の研究をベースにした科学的ツールで、対人判断の要素を4つのタイプに分類している。

コーチング
コーチングでは、自分の内面に潜む感情の現れ方をもとに4つのタイプに分類している。

 これらの分析手法はいずれもチームビルディングを進めるための有効な分析手法となっていますが、ファシリテーター(進行促進役)の技量や習熟度によってチームビルディングの成果が変わるといった実用面での問題が生じるため、理論的には正しくても必ずしも現実的に有効な分析手法とはいえませんでした。
 そこで、登場したのがFFS(Five Factors &Stress)理論です。FFS理論とは、組織人事心理学者である小林惠智博士が、米国国防機関の委託研究による成果を基に、提唱した実益的な組織編成を行う際の因子分析理論です。この理論は、2000年以後、日本では約40万人(約400社の上場企業)に導入されており、最近では中
小企業にも広く浸透してきました。また、日本国内のみならず、米国はもとより、韓国・中国・シンガポール・ベトナム・マレーシアといった諸外国で急速に活用される様になっており、この理論を活用してベンチャー企業20社以上が上場を実現しています。

7.FFS理論による組織力の分析
 FFS理論は、人間関係を科学の目で見直し、人材の思考・行動パターンから、人の個性(個別的特性)を分析するのに適しています。そして、FFS理論による分析結果を多変量解析する事により、組織の目的を明確にして、組織力を効果的・効率的に発揮する事ができる最適組織を編成することができます。企業の経営目標を達成するためには、経営戦略を立案するとともに、これらの戦略を具体的に実行するためのツール・手法を導入したり、PDCAサイクルによる計画・実施・検証活動等さまざまな方策を講じなければなりません。経営活動(組織活動)を植木に例えると、それを支える植木鉢の土壌改良がFFS理論による最適組織編成にあたります。どんなに優秀な人材(植木)がいても、活かすための組織(植木の土)が最適でなければ、人材の能力は十分に開花しないのです。
 FFS理論に基づいて組織を最適編成すると、職位や役職に関係なく、チーム内で個性の違いによる役割分担が自然発生的に生まれます。これまでのFFS理論による組織編制結果では、チームを構成するメンバーの職務遂行過程での充実感ならびに遂行結果に対する充足感がともに高くなるという結果が得られています。

 つまり、ミッションに合わせて個性を相互に補完するように最適チームを編成した場合、自然発生的に役割意識が芽生え、問題解決に対して個々のメンバーの強みが生かされ自発的に役割分担を行う様になります。そして、チーム目標達成に対する参加意識も高くなり、しかもその意識が長時間維持できるという好循環が起こります。

 このような最適チームで起こる組織のダイナミズムは、『自律チーム型組織』(チャールス・マンツ著/生産性出版)で紹介されている高業績を達成させるチームの定義と合致しています。

 またFFS理論を具体的に実務面で応用するためには、次の3 つのステップが必要となります。

【step1】FFS個人分析・ストレス分析
最初に、人の個性を5つの因子の強弱によって分析し、個人の思考行動特性・向き不向き・強み弱みと現在のストレス状態を計量化し把握します。

【step2】FFS組織力分析(人材の関係性)により人材の個別的特性(思考行動パターン)を科学的に分析する。
 そして次に、step1で得られた個別的特性の計量結果を、目的別にグループ分けを行い、チームを構成するメンバー間の人間関係を多変量解析して、その結果を相関係数と系統樹で図式化して可視化します。この作業を行うことにより、これまで抽象的と言われていた人間関係を定量的に把握することが可能となり、チームのミッションに対して生産性をあげることが出来る人間関係(補完性)が成立しているかどうかを検証することができる様になります。

【step3】FFSチームビルディング(最適組織編成)
 最後に、FFS個人分析や組織力分析等から得た分析結果を基にして、事業の経営目標を効果的・効率的に実現する最適組織編成をシミュレーションしてチームオペレーションを提言致します。この様にして、目的別のチームを確実に編成することが出来るようになります。

8.おわりに
 チーム編成時に、FFS理論に基づく個人分析・組織力分析を実施することにより、組織力、人材力、チーム力が可視化され、戦略的チームビルディングがサイエンスとして成立しますので、平凡なメンバーを集めチームを戦力化して、非凡なアウトプットを実現することが可能となります。
 人材確保に悩まれて居られる中小企業の経営者の方々にとって、FFS理論に基づくチームビルディングは、その悩みを解決する最良の戦略的な人事技法かと思います。本論文を読まれ興味を持たれた方は、弊社までお問い合わせの程宜しくお願い致します。

著者プロフィール
平野 喜久臣氏
株式会社 ティ・エム・ジー代表取締役
(特)日本経営士協会 九州支部 理事
 
昭和21 年長崎県生まれ。62 年 株式会社ティ・エム・ジーを設立し、医業経営に特化したコンサルティングを開始。平成8年には医学博士 本田孝也医師(慶応大学医学部卒)と戦略的診療構造改善システム(CACS)を共同開発、以後ITを活用した医業経営支援システムを構築・開発し、全国展開。
この間、時代の要求に応えるかたちで、病医院の新規開業、老人保健施設、ケアハウス、障害者福祉ホーム、複合型介護施設等開設に係るコンサルティングを精力的に実施するとともに、医療制度構造改革に対応するため病・医院の人材育成開発に力を注いでいる。
主な著書に、「コンピュータによる請求洩れ診断と収益現状分析」(医療経営情報ミクス社)、「レセコンデータリサイクルシステム」(メディカルクオール)、「人材を活かし適材適所を科学的に実現するチームビルディングの方法」など多数。

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